ポージーの住んでる世界は,千フィートもの高さの壁でぐるりと取り囲まれていた。
壁を越えた世界に行っちゃいけない。
子供たちは,厳しく戒められ,魔法の勉強に励むのである。
でも,ポージーは,空高く飛んで,壁の向こうを覗いてみたい。
あそこを越えられる魔法がないなら,何とか別の方法で。
ポージーは,試行錯誤のすえ,グライダー…のような飛翔機を作り出し,空へと飛び立ちます。
魔法のほうきの力と,上昇気流に乗った飛翔機は,ポージーを壁よりも高く,運びます。
ほうきに乗って追いかけてくる,ちょいと意地悪な従兄弟とその仲間たちの妨害を振り切り,彼らが唖然とするような飛行をやってのけるシーンなど,子供受けしそうな冒険譚でもあります。
魔法の世界という設定からも,何やら,ハリー・ポッターの一場面といってもおかしくなさそうな。
しかし,物語は,これで終わりません。
壁の外の世界は,科学の支配する私たちの世界。
でも,人間には,もともと“魔法”といわれる,すばらしい潜在能力,たとえば,サイコキネシス,テレパシーなどの能力を有しているはずだが,それを信じることなく,知らぬ間に封印しているのです。
それに気づいた人間が,“魔法”の世界を作る…というか隔離し,大事にその能力を育てる場を設けたというのが真相だったのです。
ゆくゆくは,科学と超能力のどちらも自在に使える時代が来て,この壁も消えることだろう。
やや,説教くさいところがなきにしもだが,魔法と冒険という魅惑的要素をかっちりと下敷きにして,ポージーの父親の話や,ウィッケンズ先生の意外な正体等々の薬味を効かせる…きちんと,つぼを押さえている作品であります。
終わりの台詞も,また,いいんですよね。
安心して読める1953年作の定番作品である。
講談社文庫「不思議な国のラプソディ」
「SFマガジン 1999年2月号」に収録。
「SFマガジン」は,雰囲気をよく表した挿絵がついています。

