天使の降臨が現実の現象として発生し,それがために生起する数々の奇蹟と理不尽な災難。
“神の御業”を体験した人々は,一層信仰を深めるグループと,少数派ではあったが信仰に背を向けるグループとが存在した。
主人公ニールは,最愛の妻セイラが,天使ナタナエルの降臨の際に,割れガラスの直撃を受けて失血死するという災難に見舞われてしまったのである。
セイラは天国に召されたが,ニールは全く納得することができません。
もともと神への信仰の薄かったニールは,神の存在のないという“地獄”へと墜ちることに,それほどの恐怖も感じていなかったのだが,あの世でセイラと再会できなくなることには耐えられないというジレンマが生じてしまったのです。
天使の降臨が引き起こす気まぐれな結果に対して,どのような“意味”を見い出すのか,神を信じる者,信じない者,はざまで揺れ動く者,様々な人々の反応が多様に描かれます。
天国も地獄も見え,奇蹟が現れるのも見えるのに,必ずしも,その“合理的”な基準が見えない…何とも,居心地の悪い世界です。
「神の沈黙」ということはよく言われますが,派手な現象だけが出てくるのもねえ。
もちろん,天使たちは何一つ,答えることはありません。
この手の題材は,説教臭く,面白くないものに陥りがちなところ,きちんと思考の手順を踏みながら,かつ読みやすい話に仕立てているのはお見事です。
しかし,結末はどうでしょう。
ニールの納得については,キリスト教的バックボーンのない者には,もう一つ共感できるところまでいかないのですが。
2002年,ヒューゴー,ネビュラ,ローカス賞ノヴェレット部門受賞作。
