歌の世界では,よく「一発屋」といわれるヒット曲がありますが,SF短編にもそういうものがあります。
ワインボウムの「火星のオデッセイ」,ジェイムズ・イングリスの「夜のオデッセイ」,有名どころでは,「冷たい方程式」などがありますが,心に残る作品たちではありませんか。
この“努力”(E for Effort)もまた,「一発屋」でありますが,埋もれさせるには惜しい作品であります。
デトロイトの場末の貧相な小屋掛けの映画館にふらりと立ち寄ったエドは,こんなところに全くそぐわないリアルなスペクタクル映像に驚きます。
エドは,これを製作したという男マイクから驚くべき機械の秘密を打ち明けられます。
それは,過去のあらゆる時代のあらゆるポイントに自在にセッティングすることができ,望みのままのシーンを撮ることができる“Time Viewer”だったのです。
彼らは手を握り,アレクサンダー大王を生撮りしたフィルムを携えて,このフィルムに音を入れ,効果的なシーンを挿入し,編集して,映画として完成・成功させるため,ロサンゼルスへと向かいます。
そして,このフィルムに出来栄えにうなったハリウッドのエージェントのジョンソンたちと組んだ最強チームは,この映画で大当りをとり,続いて,ローマ帝国の衰亡,フランス革命,アメリカ独立戦争,南北戦争と,衝撃作を次々と送り出します。
だが,マイクの最終的な目的というのは,金でも名誉でもありませんでした。
「愛国」の大義のもとでの2つの世界大戦,それを起こす地位にいた人々の真実の姿を暴くことで,戦争の醜い隠された実態を世間にさらけ出し,再びこのようなことが起こらないようにしたい…
人類が核の力を保有した今,そんな切実な気持ちを持っていたのであります。
この最後の衝撃作が公開されるや,轟々たる非難の嵐,政府の介入,民衆の暴動…世界は,混乱に陥ります。
“Time Viewer”の有する強力な力,世界中の軍がこれを喉から手が出るほど求めることは当然のことです。この機械が,戦争を無意味なものにすることを望んでいたマイクでしたが,彼の思惑とは異なる方向に事態は進んでいきます。
長々と書き連ねてしまいましたが,歴史的人物の歴史的瞬間をリアルタイムで見ることのできる“Time Viewer”の面白さを十分に堪能させてくれるとともに,だんだんと深く重いテーマへと読者を運ぶ展開は力強さがあります。
全体を通して,知性的で格調高く,感情のうねりも適度にまぶせながら,ラストへと集約していく見事な手際であります。
1947年作ということで,当時の世相か,ペシミスティックな色調を帯びており,なおかつ,結末も“戦争屋”たちの愚劣さを際立たせ,暗澹たる思いにさせられます。
それが,作品に一層の苦味を与えて,余韻を残しているんですね。
指折りの名作でありましょう。
このアンソロジーが、この作品を忘却から拾い上げてくれています。

