創世記~H.ビーム.パイパー①

 枯渇し疲弊した母星ドールシャから,希望を載せて惑星タリーシュへと向かう宇宙船。

 だが,着陸を目前にして,隕石の衝突により,宇宙船は大爆発を起こしてしまいます。
 かろうじて,小艇で脱出した,カルヴァー・ダード大佐をはじめとする男2人女6人のグループの,タリーシュでのサバイバルが開始します。

 石の鏃による狩猟で命をつなぎ,原生の猿人との熾烈な闘争に明け暮れる日々。 

 宇宙船からわずかに持ち出せた,武器・弾薬,原子力ライターなどの利器も,次第に底をつき,すっかり,石器時代に戻ってしまうのです。

 だが,厳しい年月のうちに,グループには子供が産まれ成長し,タリーシュにおける,確かで着実な橋頭堡を築きつつあったのですが…。


 最初に読み進んでいったとき,どこかで読んだような話だなと。
 そうです,J.P.ホーガンの「星を継ぐもの」とよく似ています。

 この手のアイデアは,SF作品ネタとして,結構スタンダードなものなのかもしれません。

 「星を継ぐもの」を読んだとき,その意表をつく“オリジナリティ”に感嘆したものでしたが。

 今日的視点からすれば,ジェンダーの観点や,原生人類側の言い分が欠けていることなど,あげつらう点はいくらかありますが,未開状態に放り出された人々が,自らの力で苦難を乗り越えて,タリーシュの支配者となるべく力強く歩みだす姿には,素直に感動させられるものがあります。

 その発展の原点には,故郷の惑星ドールシャの「あの文明をもう一度この手に!」という,先祖の強烈な思いが,子孫代々に伝えられたことにあるのでしょう。

 筋の面白さはもちろんながら,やや芝居がかっているとはいえ,ドラマチックなシーンが,この作品の魅力を増しています。

 なかでも,大佐が,両足を負傷した後,長い責任と重圧の日々と,牧畜,農耕,言語などの文明の礎を十分に伝えられなかった後悔をつぶやくシーン,彼の英雄的最期と,大佐の息子が新たなリーダーとして認められるシーンが印象的。

 ところで,惑星タリーシュは,いわずと知れたわが地球。それでは,水の枯れた惑星ドールシャは,どこで,我々は何人の子孫なのでしょうか。

 H.ビーム・パイパーの1951年発表の定番的短編で,講談社文庫の福島正美編集アンソロジー「千億の世界」に収録されています。

 


 邦訳短編には,ほかに,火星の古代語の解読の物語「オムニリンガル」があります。
 創元で「リトル・ファジー」という,可愛らしい知的小動物が主人公の長編がありましたが,これは未読。