目を付けた惑星の原住民を,大気を除去する装置により,追っ払ってしまうという荒っぽい方法で宇宙への殖民を広げる人類。
そんなやり方に抵抗し,「こんな連中にわが星を好きにされてなるものか」と自爆装置を仕込んで退去する原住民もおり,植民には危険いっぱいの物騒なところもありました。
主人公のレスター総督が統治する惑星リジムは,今のところそのような兆候もなく,大気製造装置をはじめとする惑星再生の働きにより,次第に緑が広がり,海が拡大しようとするまでに至っていました。
しかし,すべてが順風満帆というわけではありません。
何より,総督と妻との間がうまくいっていない。
妻は,いつ原住民の報復があるともわからない不安,受刑者ばかりの植民者の間での孤立,そして,息子が事故により命を奪われたことにより,この惑星に対する嫌悪は激しく,一刻も早い地球への帰還を望んでいたのです。
惑星改造のお話それ自体としても,なかなか読ませるのでありますが,それを家庭問題と関連付けてしまう強引さが印象的な作品であります。
オールディスは,ひねくれたお方なのか,円満な家庭を描くのは好きではないのでしょう。
愛する息子だけではなく,娘までも事故で失ってしまう悲惨さ。
しかも,それが,妻の制止を振り切ったうえでの遠出で,なおかつ惑星改造の希望の証でもある「海」での事故とは・・・。
すれ違いのもどかしさが,実に痛気持ちいい作品であります。
惑星の環境以上に,家庭も寒々しいとは耐えられませんね。
ラストは,主人公の英雄的な死で幕を閉じるのですが,うまく死に場所が見つかったという主人公の安堵すら感じられます。でも,残された妻のことを思うとねえ。
こうしてみると,これはやはりSFの衣をまとった「家庭小説」ですね。
「SFマガジン」1986年3月号掲載。
深町眞理子氏訳。ところで,自爆装置を,“まぬけ落とし”としてありますが,原語は何でしょう?
