わずか4ページあまりのショート・ショートですが,結構インパクトのある作品であります。
スミス氏の家から100メートル先,強烈な爆発音と白熱の閃光の後,立ち昇った濃霧からあらわれいでたる男。
彼は言う,我こそ「史上ただひとりの時間飛行者」であると。
ともかくも,スミス氏は,彼を家へと招じ,ひとしきり話を聞きながら,合いの手を入れております。
どうも,彼は,大変な危険を覚悟で,時間旅行に挑戦したようだ。
ものすごいエネルギーを消費したおかげで,彼の時間での地球は消滅したらしいのです。
「まあ,とにかく,一か八かやってみて,悔いはありません。危険は予測されましたが,論点は証明しました。なにはともあれ,やるだけの値打ちはあった,といまでも思っています。どう思われますか?」
って,どう思うもくそもないですよね。
このおじさんの道楽のために,地球一つを犠牲にするとは,洒落にならない。
地球の未来を返せ,このトンチキめ,というべきところ。
でも,“未来”からやってきたという場合,なぜか,遠い先の未来を想像してしまうのですよね。
まあ,えらいことになったとしても,当分は,関係のない話かと。
そこいらの固定観念を粉砕するようなショート・ショートでありまして,大いなる虚脱感におそわれてしまいます。
やや,素人くさいといってもよい作品なのですが,妙に記憶に残ってしまうのが不思議。
河出文庫「20世紀SF③ 1960年代」にも収録されていますが,並みいる作品を押しのけて,この作品を掲載したということは,既成観念をひっくり返すという“WONDER”を感じさせるからなんですかね。
スミス氏の落ち着き具合も大したものですが,まあ激怒してみたってどうにもならないですし,ほんと冴えない終末です。
