人形つかい(The Handler)~デーモン・ナイト①

 「人形つかい」といってもハインラインの有名作品(こちらはThe Puppet Masters)ではなく,デーモン・ナイトの作品である。
 この作品は,何回読み返しても笑ってしまう。

 その大男が広間に入ってくると皆が一斉に歓声を上げた。
 「ショーは大成功だった!スポンサーも次回作を契約してくれたよ!」
 再び喜びの大歓声。パーティーも最高潮。

 「みんな本当にありがとう。ぼくだけじゃこれだけのことはできなかっただろう。幸いここにはジャーナリズム関係の方も来ておられる。いい機会だから,ひとわたり主要なメンバーの紹介をしようと思う。」

 …典型的なアメリカ人的パーティーの様子や,いわゆるパーティージョークに,少々辟易しながら読み進めていくと,全く意表を突く展開が待っている。

 大男の背中がぱっくりと割れて,もぞもぞと小男が這い出したあとの,何ともいえない気まずさと,居心地の悪さ。

 エネルギッシュで快活,人を惹きつけるカリスマ的魅力を持った大男を体内で操作しているのが,さえない赤ら顔の猫背の小男という落差のおかしさ。

 白けた雰囲気が広がり始めたとき,友人が真剣な口調で小男に忠告する。

 「なあ,フレッド。中に入ったほうがよくないか?」

 ちょっと休みたかったんだが…どうやら…と,フレディが大男の体に入り込むや,大男は,目をしばたたかせてむっくり起き上がり,さあ,盛り上がろうぜと手を振り回す。パーティーは,再び熱気と賑わいを取り戻す。

 フレッドには同情を禁じえませんね。
 自らと180度違う人間を演じることは,彼にとって,どういうことなんだろう。 世間的には,主客逆転しているのだから。

 動と静,陰と陽とのコントラストが,ばっちり決まった,ブラックユーモアが冴える作品である。
 文字通り皮相的な大男と彼を持て囃す人々に,作者の皮肉な目が向いているような気もします。

 創元SF文庫「SF ベスト・オブ・ザ・ベスト 下巻」収録。