この短編は,老齢者が理由もなくバタバタと死んでいくという,奇妙な現象の進行と顛末と謎探りのお話です。
この現象に気がついた保険計理士である主人公は,こう言います。
「なんてこった!この率でいくとそのうち75歳以上の老人なんて,どこにもいなくなっちまうじゃないか!」
それから,一年もたたないうちに,世界は,立法府のメンバー,国王,大統領,首相,独裁者,将軍,裁判官,法王,枢機卿…の多くを失います。
これは、なんと大きな昇進と壮麗な式典のチャンスだったことか!
何かが,あるいは誰かが,老齢者問題を解決しつつあるのではなかろうかという憶測さえ生まれたほどです。
出生率と死亡率との拮抗。
最初,これを極めてパーソナルにとらえた人々,つまり,孫が生まれると祖父さん,祖母さんが死ぬと考えた人々は,子供をあきらめます。
にもかかわらず,どんどん老人たちは死に続けます。
だまされた!
国連は大混乱。
どこかの国が他国を欺き,生めよ増やせよ政策を祖国のために奨励しているらしい。
某世界一の人口を有する国の背信行為に,米ソは怒りの手を組み,某国を核爆弾で壊滅してしまうのです。
恐ろしく過激で,時勢がらこわい話ですね。
どうやら,人類は50億が限度らしい。
つまり,「魂」の数に限りがあり,ついに在庫がなくなってしまったため,造物主がこのような措置をとられたのではあるまいかと主人公は考えます。
なかなかに,ぶっとんだ展開ですね。私は好きですが。
このストーリーでは,老人人口が激減,このまま野放し状態で出生率が死亡率を上回る限り,平均寿命は下がり続けるといいます。
わが国の状況は,問題を抱えたまま,活気のないままの人口爆縮の可能性あり。
この作品よりは,よい世界となっているのでしょうか。
ハヤカワ文庫SF「ホークスビル収容所(ワールズ・ベスト1968)」収録。
