世はなべて車優先の時代。
何よりもまず,車の円滑な運行に全力を注がなければならない。
デイヴィスは,運輸局の運輸課長。
出勤してみると,死傷者報告はおそるべきものであった。
早速,局長から電話が入る,この事態を何とかしろ!
近親者確認の時間短縮の指示を出したデイヴィスは,ヘリコプターでニュー・ヨーク市内の巡察に飛び出す。
交通は各層にわたって混雑をきわめていた―現実に見えるのは上の三層だけで,実はその下にまだ8層あるのだが―そして,タイムズ・スクウェアの中心インターチェンジはますます大量の車を抱えこんで膨らみつつあった。
自然保護や由緒ある建築物を犠牲に(自由の女神の台座も,車線の基部に借用!)してまでの道路建設に異を唱えても,どなりつけられるのがオチ。
交通は動かさねばならないんだ,わかったか?
デイヴィスは,様々な交通阻害要因を見出しては,てきぱきとした指示を出していく。
手荒で強引なやり方なんだが,そうでもしないと,この猛烈な状況をさばけないのである。
この作品の魅力は,尋常ではない車至上主義の下で繰り広げられる運行コントロールを実に生き生きと描き出しているところにあります。
デイヴィスは,車間距離を詰め,最低速度をアップし,2年前の年式の車の強制排除に乗り出し,縦横無尽の活躍を行います。
根本的な車社会の弊害には目もくれず,いかに現況をさばくかに手腕を発揮する姿は,迷いがなく,いっそすがすがしいくらいであります。
実に有能な男。
外は緑一つなく,濃いスモッグにおおわれた,やな世界になってしまっているんですがね。
講談社文庫「世界カーSF傑作選」に収録。
この作者は,ほかに邦訳がなさそうですが,これは会心の一作でしょう。
