この広い世界には,地面がくるりと反転する場所があるのだそうな。
場所は西マルク諸島界隈。
この蝶番は,硬木のカポックでできており,たっぷり油がさしてあります。
この地域の人々は,穏やかな気質で,他の部族とも平穏にやっていたのですが,伝説では,大地の下にいる人々は,おなじ名前をもち,おなじ外見をしていながら,全く正反対の火のような気性をしているそうな。
蝶番が,くるりと回った日には,どうなることやら…。
奇想天外な「ホラ話」の愉快さと,ちょっぴり突き放したような酷なところもある豪快な展開を楽しめます。
正直,ラファティの短編では,独特の感性についていけず,意をつかめないものも多いのだが,ツボにはまると,忘れられない印象を残します。
この作品は,そういう類のものである。(つまり,とっつきやすいということかも)
温厚な人々が,突如暴虐となり,その猛威に手も足も出ず,ほしいままにされる周辺の人々。
なんとか,首尾よく,蝶番をひっくり返した後では,反省して,搾取をやめることになるのだろうか。
いや,どうも,次にひっくり返るまでは,「今のうちに,すき放題やってやれ!」ということになるのではないかと思うのだが,どうでしょう。
西マルク諸島というのも,インドネシアとパプアニューギニアとの独立紛争での何かを示しているのかもしれません。
物語のラスト近く,ドイツが,ここ2~3世紀の間で,反転したのではないかという暗示めいた記述があります。
もちろん,先の大戦のことだが,ベルリンの壁の崩壊のときも,くるりと反転したのかもしれません。
激変のこの時代,いろいろな場所で,世界の蝶番がうめいているのでしょう。
ハヤカワSF文庫「どろぼう熊の惑星」収録。

