世界大戦を繰り返したあと,このままじゃ人類滅亡だということで,恒久的平和を手に入れるために,実務家たちが考えたこと…それは,あくなき人類の闘争本能を満足させるための,合法的殺人ゲームだったのです。
殺人をしたい者は,管轄機関である「精神浄化!局」に登録します。
いくつかのデータと保証書を提出すれば,獲物を与えられます。政府規約のもとに殺人登録を行ったものは,数ヵ月後には今度は自分が獲物の役にまわらなければなりません―もし,生き残ったならばの話ですが。
スタントン・フリレインは,これまで6回のハントに成功していました。
つまり,6回の殺害成功と,6回の返り討ちの成功となります。
10人の獲物を首尾よく仕留めたならば,栄えある「10人抜き倶楽部」に入会することができるのです。
フリレインの7人目の獲物は,美しく若い女でした。
今までの獲物たちは,監視人を雇い,あらゆる防御手段をとっていました。
それらをかいくぐり,獲物を仕留めることこそ,えもいわれぬ達成感,満足感を得ることができるのでした。
しかし,彼女はあまりにも無防備。
こんな獲物をすぐ殺してどうなる。
獲物とお近づきになる。こんなスリルを味わってみよう。
フリレインの逡巡,油断が墓穴を掘ることとなります。
どんでん返しが洒落ているシェクリイの会心作ではないでしょうか。
「徘徊許可証」のようなほのぼの系も好きなのですが,やはり,切れ味鋭いショッカーがいいなあと思います。
この作品は,マストロヤンニ主演で映画化(邦題「華麗なる殺人」)されており,ノヴェライゼーションをシェクリイが担当しています(「標的ナンバー10」)が,原作短編の方がずっと出来がいいとの話があります。
人の命がきわめて軽く扱われる世界は、「危険の報酬」と同じですね。
どちらも,“自発的"な参加者であり,当局なり,巨大なマスコミのもとで,愚かな役割を演じているにすぎないのに,当人にはそんな意識はまったくないんですよね。或る意味お気楽というか…。
哀れな末路も,自業自得というべきか。
美しい女には毒がある…少々,陳腐なパターンかもね。
ハヤカワ文庫SF「人間の手がまだ触れない」に収録。
