ラセンウジバエ解決法~ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア②

 本作は,ラクーナ・シェルドン名義で77年に発表された作品。

 突如,フェミサイド(女性殺し)が世界に蔓延しはじめる様子を,一組の夫婦を愛を通じて描いています。

 人類の潜在的障害は,男性の攻撃/捕食の表現行動と有性生殖とのあいだに,つねに密接な連鎖が暗に含まれていることである。

 つまり,何らかの要因により,女性殺しが性欲への反応として,極端に顕在化してしまったのです。

 主人公のアランは,5000マイル離れた愛する妻アンに迫る危機を案じて,コロンビアから帰路につきます。

 しかし,愛しいアンへの思いは,恐るべき欲望へと変化していたのです…


 いやいや,何とも救いのない話ですね。
 
 女性が男性に滅ぼされる

 ―極端な設定ですが,割と,宿命的に,男性不信的な作品の多い彼女の作品の流れではあります。

 自らが感染したことをわかり,絶対に近寄ることのないよう,アンに厳命するアラン。涙ながらに従うアンと,理解できない娘エミー,そして,痛切な結果。

 何もかも失い,一人さまようアンは,異星人と出会ったと手記に書き記します。

 彼らにとっては,人類は,ラセンウジバエのような存在なのですね。

 地球の美しい地表に広がり,蛆虫のように食い散らす存在。

 その駆除方法は,わが人類が,ラセンウジハエを根絶することに成功した方法と似通っていても不思議ではありません。
 むしろ、それがもっとも,クリーンなやり方なのかもしれません。

 皮肉な因果応報といえばそれまでだが,あんまり笑えないブラックユーモアですね。

 特段の罪悪感もなく,当然のように女性殺しが進められる物語前段は,ホラー小説的な肌寒さを感じます。

 美しい夫婦愛も,血も涙も無い結末の前では,とってつけたようなセッティングであるような気さえする作品です。

 でも,いい作品ですよ。
 それほど,筋も混み入らず,まあまあ読みやすい。
 強烈な視点は,やはり印象に残ります。

 ネビュラ賞ノヴェレット部門受賞作。