ユニコーン・ヴァリエーション~ロジャー・ゼラズニイ③

 雪男,バシリスク,伝説上の生き物たちが,地球上に実在し始めました。

 種がひとつ滅ぶごとに,“朝の国”という幻想の国に住む生き物が,その後を引き継いでいるのです。

 人類が黄昏を迎えようとしているときのお話です。

 主人公は,人気のない荒れた酒場で,チェス盤に向かっていました。
 彼は,かつては,相当にならした腕前だったのです。

 何かが,盤前に座る気配を感じる…と,対手の駒がひとりでに動くではないですか。

 そのものは,“朝の国”に住むもので,人類が滅び,その後を継ぐに備えての事前視察にやってきたのでした。

 その姿は,ユニコーン,ビールをこよなく愛し,チェスの名人でもありました。

 主人公は,ユニコーンと再戦の約束をし,何とか,人類の滅亡を防ぐ手立てはないものかと思案するのでした。


 全体の印象としては,人類の危機という題材にもかかわらず,きわめて,のどかで,ほのぼのとした気持ちになる作品です。

 設定が大らかで,ノスタルジーを誘います。

 おがくずをまいた床,ピアノ,磨き上げられたカウンター,ビール樽…
 ユニコーンも古き良き時代を愛する生き物なんでしょう。

 あと,チェスの知識があれば,より身近な作品になるのだろうが,いかんせん,チェス駒の名称すらあやふやな私には,主人公とユニコーンの繰り出す妙手・名手と,駆け引きの面白さがわからないのが残念。

 知ってる人が読んだら,一段と魅力が増すのでしょうね。

 あまりに,楽観的なハッピーエンドには,ちょっとゆるい話じゃないかとも思いますが,お話としては,わかりやすく,きれいにまとめているという印象です。

 1982年度ヒューゴー賞ノヴェレット部門受賞作。

 「SFマガジン」1983年9月号掲載。