雪男,バシリスク,伝説上の生き物たちが,地球上に実在し始めました。
種がひとつ滅ぶごとに,“朝の国”という幻想の国に住む生き物が,その後を引き継いでいるのです。
人類が黄昏を迎えようとしているときのお話です。
主人公は,人気のない荒れた酒場で,チェス盤に向かっていました。
彼は,かつては,相当にならした腕前だったのです。
何かが,盤前に座る気配を感じる…と,対手の駒がひとりでに動くではないですか。
そのものは,“朝の国”に住むもので,人類が滅び,その後を継ぐに備えての事前視察にやってきたのでした。
その姿は,ユニコーン,ビールをこよなく愛し,チェスの名人でもありました。
主人公は,ユニコーンと再戦の約束をし,何とか,人類の滅亡を防ぐ手立てはないものかと思案するのでした。
全体の印象としては,人類の危機という題材にもかかわらず,きわめて,のどかで,ほのぼのとした気持ちになる作品です。
設定が大らかで,ノスタルジーを誘います。
おがくずをまいた床,ピアノ,磨き上げられたカウンター,ビール樽…
ユニコーンも古き良き時代を愛する生き物なんでしょう。
あと,チェスの知識があれば,より身近な作品になるのだろうが,いかんせん,チェス駒の名称すらあやふやな私には,主人公とユニコーンの繰り出す妙手・名手と,駆け引きの面白さがわからないのが残念。
知ってる人が読んだら,一段と魅力が増すのでしょうね。
あまりに,楽観的なハッピーエンドには,ちょっとゆるい話じゃないかとも思いますが,お話としては,わかりやすく,きれいにまとめているという印象です。
1982年度ヒューゴー賞ノヴェレット部門受賞作。
「SFマガジン」1983年9月号掲載。
