プリティ・マギー・マネーアイズ~ハーラン・エリスン①

 人生に敗れた男コストナー
 ラスヴェガスのカジノでのギャンブルも,有り金はたいて素寒貧。

 ポケットに残っていた最後の1ドル銀貨をスロットマシーンに放り込み,レバーを引いた…
 ジャックポット!…2000ドルの大当たり!
 でも奇妙な並びだ。青い目が3つ並んだジャックポットとは。

 コストナーは連続してジャックポットを出し続けます。

 支配人室で,コストナーは,そのスロットマシーンにまつわる因縁譚を聞きます。
 一人の女が,そのスロットのレバーを引いている最中に心臓発作で息絶えたことを。

 チェロキー・インディアンの母と,いきずりのポーランド系労働者の父との間に生まれたその女,マギーは,自らの容姿と肉体を売っていました。

 食べるものがないよりマシ,惨めで,情けなく,物も金もなんにも無いよりは!ゴミタメから這い上がり,這い上がり。

 彼女は,死のみぎわに,強烈な思念を,スロットマシーンに注ぎ込んでいた。マシーンに魂が閉じ込められていたのです。

 マギーは,コストナーに念を送ります。

 「あなたを待っていた。あなたが必要なの。わたしを愛して。」

 愛した女性に手酷い仕打ちを受け,失意の人生を送るコストナー。それなのに,性懲りもなく,マギーを信じてしまうのです。

 だました女が悪いのか,だまされた男が馬鹿なのか。
 コストナーのため息が聞こえるような哀感あふれたラストも,見事なものです。
 人生に疲れたコストナーの諦観が心に染みますね。
 
 エリスンおなじみの修辞と文体が縦横にめぐるビターな物語は,伊藤典夫氏の翻訳もうまいのでしょう,実にスタイリッシュ。

 「SFマガジン 2000年2月号」掲載。