臓器ギャンブルが行われるフランスの高級カジノ。
高名なニュースファックスのレポーターのファイファーは,友人のジョーンを誘い,この賭博場へ入り込む。
階が上がるごとに,賭けは深刻となり,命のやりとりさえ行われるようになる。
その最上階で,ゲームは始まる。
“ブラインド・シェミイ”は,ブラックジャックに似たゲーム(「カブ」に似てるかな?)です。ただし,「サイ連結」といって,サイコンダクターにより,ゲーム参加者相互のテレパシーの送信・受信を可能にするというオプションを付加しています。
このようなテレパシーが可能となれば,いかに相手をだまくらかしゲームに勝つかが主題になるでしょうが,この作品では,テレパシーにより,人の心の深奥を覗き込むこと自体に,主題を置いているようです。
ファイファーは,父親の抑圧に基づく男色欲望の怖れにおののいているし,ゲームの相手方のゲイエというおやじの敗残の臭い,そして,ゲイエを支配している妻のグレースのおぞましき過去・・・。
ゲームに勝つために,互いの秘めた“弱み”を抉り出し,容赦なく攻撃を仕掛けます。
毟り取ろう―テーブルの向こうの夫婦を一寸刻みにして,プライバシーを奪い,その屈辱を思うさまもてあそんでやろう。
破壊的な黒くうねる情動の渦のぶつかりを,たたみかけるように描く後半はなかなか読みごたえがあります。
なんとも世紀末的な感覚ですね。
破滅に至るような行為に,わきいでてくる快感。
性的なものと一体となって迫力をもって押し寄せてきます。
一歩先は奈落の底,賭博の持つ魔力を,こういう形で料理する,なかなか洒落た作品でありましょう。
ハヤカワ文庫SF「80年代SF傑作選(上巻)」収録。

