ドッグウォーカー~オースン・スコット・カード③

 9歳のとき,銃弾を頭に受けて死んでしまった少年

 ―彼は,頭に,人工脳味噌と光ファイバーを詰め込まれ再生したのですが,何かの拍子で,特殊な才能…人の心理を読み,“パスワード”を読み取ることのできる能力を備えることとなったのであります。彼の名は,グー・ボーイ。

 グー・ボーイを仲間に引き入れ,連邦捜査官になりすまして“グリーンカード”を詐取するため,ドッグウォーカーは,グー・ボーイに何とか,その高官の端末のパスワードを読み取るように頼みます。

 高官のパスワードと指紋を入手し,見事端末への侵入を果たした彼らは,首尾よくグリーンカードを入手することができ,犯罪組織から莫大な報酬を手にすることができたのですが,グー・ボーイは,あまりにうまくいったことに,なぜか,不安が走ります。


 サイバーパンクの描く人間が大嫌いなカードさんの,サイバーアクションであります。

 あのギブスンさんの,「クローム襲撃」と似てはいます。

 一方で、ギブスンさんの,あの電脳空間のクールな描写とは異なりまして,カードさんは,同じような題材でも,人間臭いところに流れていかれます。

 グー・ボーイとドッグウォーカーが,次第に,“友情”が芽生えてきますのと,グー・ボーイがドッグウォーカーの命を救おうとするところ,そして,ラスト,敵討ちを試みるところなど,実にウェットな話となります。

 自己本位で冷たいサイバーパンク登場人物とは,やはり,やや毛色が違いますね。

 ただし,ドッグウォーカーが組織から受ける仕打ちは,冷酷で無慈悲なものです。

 グー・ボーイの体自身も,ひどい話ですからねえ。カードさんは,結構,肉体的には,非人間的取扱について生々しく描くのが嫌いじゃないんでしょう。

 ここらのバランスがうまいところで,えげつない残酷さを,甘めの人物造形による“あったかさ”が,適度に緩和しているという感じがいたします。

 それにしても,やや饒舌で装飾過多なところもありますが,カードさんの語り口のうまさと,筋立ての巧みさはうまいものです。

 Dogwalkerとは,犬の散歩代行サービスを行う人,俗語では「ポン引き」のようですが,ドッグウォーカーの運命によく符合する題名です。

 「SFマガジン」1990年10月号。400号記念号掲載。