ドゥーイング・レノン~グレゴリイ・ベンフォード①

 フィールディングは冷凍睡眠から目覚めたとき,こういった。

 「ハロー,オレが誰だかわかんないだろ,ジョン・レノンなんだぜ」

 というわけで,レノンの熱狂的ファンが,レノンになりすまし,それなりに未来の世間を欺くのに成功するのであるが,好事魔多し,何と,ポール・マッカートニーも冷凍睡眠に入っており無事蘇生,そして,ご対面の企画が組まれてしまうのであります。

 こういう実在の著名人を取り扱うお話はやはり面白いですね。まして,レノンとマッカートニーという世俗的?ヒーローを登場させているわけですから。

 マッカートニーの解凍には数週間かかる。彼が死んだのはレノンよりだいぶ後だ。ふっくらと太った大金持ち。史上最高のポップスター―あるいは少なくとも最高の儲けがしら。

 後段,物語は趣を変えます。

 実は前段のお話は,主人公の人格をインプットした仮想世界でのシュミレーションであったことがわかります。

 主人公は,なりすましが,成功するようにシュミレーションを重ねているのです。

 前段のシュミレーションの分身が,独立した自意識を有し,消去されることを逃れるために本体に気づかれないように策略を練るという,ややホラー仕立ての展開となっています。

 この作品が発表されたのは,1975年。
 ご存知のとおり,レノンが暗殺されたのは1980年12月のことです。
 この作品でも,なりすましを成功させるため,あまりレノンの歴史を長引かせてはやりにくいとの理由で,主人公がレノンを亡き者にしたという設定となっております。

 いわゆるSFの「予見性」とは別の意味での「予見性」ということで,この作品は,付加価値がついているともいえましょう。