ロサンゼルスのダウンタウンで発生した連続殺人事件。
血の海と化している殺人現場。
マロリー探偵は,相棒のハリーが惨殺されたことから,事件を洗いはじめる。一連の殺人の周辺に,アンドルー・デトワイラーという青年が浮かぶが,彼にはアリバイがある。
無垢な眸をもつ端正な若者であるが,彼の背中には大きな瘤がある。彼が周期的殺人に関与しているのかどうか,マロリーは,彼の借り部屋へと忍び込み,様子を探るのであるが…。
「サンディエゴ・ライトフット・スー」で有名なトム・リーミイのハードボイルド風SF(怪奇ものかな?)であります。
題材としては,おどろおどろしく不気味なものであるが,うらぶれた,平均的?世間とはやや隔絶したような人々の生活の哀感がじんわりと効いていて,不思議と化け物の気味悪さを中和しているのである。
「サンディエゴ・ライトフット・スー」でもそうでしたが,ここいらが,この作者の持ち味なんでしょう。登場人物もよく似ていますねえ。基本的に心底の“悪人”が出てこない。
謎解き自体は,そないに気の利いているわけではありません。
日常を超えたものの存在を持ち出してくれば,探偵小説としては,ルール違反というか,成り立たないでしょう。
吸血鬼もののヴァリエーションとなりましょうが,デトワイラーの不幸な生い立ちと成長の過程,おぞましい宿命に,何となくしんみりとさせられてしまいます。
マロリーに正体を見破られたうえに,初めて“孤独”となったデトワイラー。
苦しみから解放されるために,彼はどうするのでしょう。
エンディングも,なかなか余韻を残しています。
新潮文庫「SF九つの犯罪」収録。
「scifi」に原文がありました。
