西暦13000年ごろのお話。
銀河系の果て,探検の使命を帯び,遥かな宇宙へと送り出されたスズダル中佐。
彼は,植民惑星アラコシアからの遭難カプセルを発見したが,その悲痛なメッセージを信じて,クルーザーをアラコシアに向けて発進した。ところが,それは,アラコシア人たちが人類を誘う罠だったのだ…
アラコシアへの入植20年後,彼らは,致命的な恐るべき事実を知りました。
「雌性」そのものが発癌性をもってしまったのです!
性転換と子孫を残すための壮絶な400年の時の経過が,女性,家族を忌まわしい存在となし,人類への極限の憎しみを生むこととなったのでした。
この人類の恐ろしい敵に,窮地に立たされたスズダル中佐は,「人類補完機構」から禁じられている奇想天外な手段をとります。
アラコシアの月をめがけて,16匹の猫を飛ばしたのです。その遺伝子に「文明化せよ,人に奉仕せよ,奉仕は人が呼びかけるとき始まる…」というコードを刻み込んで,200万年前へと。
こうして、猫はアラコシア上空に忽然と現れました。猫の艦隊は鬨の声をあげ,スズダル中佐へ奉仕できることへの喜びに感極まりながら、アラコシア人に襲いかかったのです。
おなじみ「人類補完機構」の連作集の一つ「鼠と竜のゲーム」の収録作品。タイトル・ナンバーも最高だが,ドラマチックに展開する本作品が特に大好きですね。
本作品集の伊藤典夫氏の解説の中で,シルヴァーバーグがコードウェイナー・スミスを評して,「彼は遠い未来からの訪問者ではないのか」と書き,スミスの作品に見られる肌合いの異様さを指摘しているとあります。まさに,この肌合いの異様さに,読者をとらえてやまない魅力があるんだろうと思いますね。
同様の感覚は,ティプトリーの作品にも通じるところがあると思うのですが,スミスの作品の幻想味と残酷で官能的,ときにエキゾチックな味わいは独特のものがあります。
波乱に富んだ異色の生涯を送った作家は,やはり,特異な感覚を持っているのかなあ。
スズダル中佐は,「補完機構」の裁きを受け,人間としての存在を抹殺され,惑星シェイヨルへと送られることになります。この惑星は,大名作「シェイヨルという名の星」の舞台となる流刑惑星で、送致後の中佐の消息も短く触れられています。
このハヤカワ文庫の「人類補完機構」シリーズ4冊が,すぐに絶版になる最近の流れの中,割合命脈を保ってきたのは,地味ながらも根強く読者が引き継がれてきたからと思うのだが,どうも「ノーストリリア」と「シェイヨルという名の星」が品切れになっているようだ。せめて「鼠と竜のゲーム」だけはと願うのであるが,実際のところ危ういのではなかろうか。これは,絶版にしちゃだめですね。
⇒SFを語るには欠かせない作品集ということで、「人類補完機構全短編」が、2016~2017にかけて、全3冊で刊行されましたね。めでたし。



