冒頭から,駄菓子,ラジオ番組…,ちっちゃな子供たちにとっては宝物の話題が出てきます。
子供時代を過ぎれば,遠い記憶として残るだけの世界。
ところが,ジェフティは,5歳のまま年をとることなく,ずっとこの世界にとどまり続けます。両親は相当精神的にまいっています。
十七年のあいだに二人の悲嘆は,さまざまな段階を経て成長していた。溺愛から気がかりへ,気がかりから不安へ,不安から恐怖へ,恐怖から困惑へ,困惑から怒りへ,怒りから嫌悪へ,嫌悪からむきだしの憎悪へ,そしてとうとう根深い憎悪と反発から,無気力で憂鬱な容認へと落ち着いたのである。
そんなジェフティとの長い友情関係を保っているのはダニイ。
ジェフティとは,もう20年来のつきあいです。
ダニイは,ジェフティが,過去の良き時代が今に生きているもう一つの世界と現実の世界とをつなぐことのできる不思議な力をもっていることに気づきます。
ジェフテイは,世界がその進歩の過程で失った,過去の無限の快楽と歓喜をうけとる端末器なのです。
ダニーとジェフティとは,秘密の至福の時間を共有するのでありますが…。
ややオタク系の作品で,エリスンの子供時代に、ちびっ子たちが夢中になったものを身近に感じられれば,ぐっと話に引き込まれるんでしょうね。
私は,ラジオの冒険ドラマにかじりつくといった経験が全然ないというか,すでにテレビの時代になっていましたからねえ。
ジェフティの無垢な無邪気さに対比して,両親の憔悴のあまりの空虚さ,ダニイも商売という現実の厳しい世界を生き抜いていることが描かれ,どうもよからぬ展開になるのではないかという雰囲気がありますが,それにしてもちょっと悲しすぎる結末です。
時代の流れに流され,美しいもの,大事なものに気づかないまま,かけがえのないものを失ってしまうことが,ジェフティの両親の行為に収束しているのでしょう。
エリスンさんにしては,あまり技巧に走らず,素直にまとめた作品だと思いますが,過去への愛惜という題材は,エリスンさんのイメージとしては意外な感じもします。
1978年度ヒューゴー,ネビュラ,ローカス各賞ショート・ストーリー部門のトリプル・クラウン作。
「SFマガジン」1979年10月号掲載。伊藤典夫氏訳。

