特殊部隊隊員のダンツラーは,ニカラグア侵攻のための拠点確保のための作戦に参加していました。
彼の小隊は,マッチョな黒人DTを隊長に,神経衰弱気味のムーディとケイジャンのルドゥー。縮み上がる気持ちを抑え,好戦的で活動的になるためには,特殊アンプルを嗅ぐことが一番です。
サンディニスタのパトロール隊が発見されたという村を壊滅させた彼らは,雲霧林の中へと踏み込んでいきます。
途中で迷い,身動きがとれなくなり,やむなくキャンプを張った小隊。
歩哨にたったダンツラーは,金色に輝く霧の中から,得体の知れぬものが襲ってくる妄想にとらわれます。この地は,現地の人からは,霊魂の世界とされていたのです。
オートマチックを乱射し,友兵たちを惨殺してしまって呆然と立ちすくむダンツラーの前に,金色の娘が現れ,ある啓示を与えます。
霧を抜けたダンツラーは,ムーディがルドゥーの喉を切り裂き,DTが足を負傷して動けないでいるのを発見します。先ほどのことは幻想だったのか。
ダンツラーはムーディを射殺し,DTをも手にかけます。このことぱ、誰にも知られていません。
退役軍人病院を経て故郷に戻ったダンツラーは,新たに軍に入った友人からパーティの招待を受けて会場へと向かいます。
戦争とは何か,アメリカがもたらしたものとは何かをみんなに教えなくてはならないと。
ダンツラーは,サバイバルナイフをブーツに装着し,念のためにアンプルを二本嗅いでおきました。
DTが,捕虜にしたインディオの青年を,ヘリコプターから鼻歌まじりで蹴落とす強烈なシーンから,悪夢のような狂気じみた世界が展開してゆきます。
作者は、エルサルバドルでフリーのジャーナリスト経験を有しているため,「幻想的」作品といえど、やけにリアルな迫力があります。
戦闘行為の非人間性と,ある限界を超えるとかえって滑稽ささえ感じるほどのグロテスクさ,それと対比的な幻想味がミックスされている、なかなかイメージ豊穣な作品です。
それにしても,ラストは,実に恐ろしく,救いのない事態を暗示していますね。
何とも暗澹たる気持ちにさせられます。
当時,レーガン大統領が,左翼のサンディニスタ政権を倒すため,反政府軍,いわゆるコントラを援助し,ニカラグアが内戦状態になってしまっていました。コントラへの武器売却代金にまつわる疑惑が出たことも記憶にのこる事件です。
そういう背景があるゆえに,アメリカの資本主義・覇権主義への反感がもろに出ている作品のため,一方的な見方だと,かなり非難もされたらしいですね。
もちろん、そういう一面もあるのでしょうが、戦時の狂気を鮮烈に表現できる、作者の力量と素質にあっては、そういう議論はあまりいみがないように感じますね。
新潮文庫「ジャガーハンター」
「SFマガジン 1990年3月号」掲載。
1985年ローカス賞短編部門受賞作。

