証券会社に勤めるスティーヴン・デイヴィス。
彼は,2年間の婚姻生活にいきなりけりをつけて出て行った妻ダイアンとの離婚協議の場,ダイアのセラピストのフンボルトなる男の設定した53丁目通の“ゴーサム・カフェ”へと赴く。
金も絡んで憎悪むき出しの協議の場が,カフェの給仕頭ギーのとんでもない狂気によって,まさに,修羅場に陥ります。
あちら側にいってしまった,長包丁を手にしたギーは,まずは,フンボルトを血祭りに上げた後,デイヴィスとダイアンに執拗に襲いかかってきます。
ギーの壊れっぷりは,抜群で,凄惨な場面が,相変わらずの巧みなストーリー・テリングで快調に展開されます。
鮮烈な視覚イメージに訴えるフンボルト惨殺のシーン
そして,わたしははっきりと見た
―鮮やかな赤い血の一滴がわたしの水のグラスのなかに躍りこみ,薄紅色の細い線をまるで尾のようにうしろに引きずりながら,グラスの底めがけてぐんぐん潜っていくのを。それは血まみれのおたまじゃくしを思わせた。
鋭い描写力をいったい何に使っているのかいという気もしますが。
筒井康隆の短編で,…から発射した液体が,白い波頭を立てて,コーヒーカップに注ぎ込まれるという,かなりお下劣な短編がございましたねえ。
恐怖と笑いとは紙一重とはよく言われますが,命懸けのチェイスの中で,絶体絶命の危機に,デイヴィスとダイアンの愚かしく浅ましいいがみあいが,噴出しているのも,笑えてきます。
意地の悪い設定は,ナイスです。
それにしても,ギーはいったいどうなっちまったんでしょう。
最初から危ない感じが漂っていましたが,全く,壊れる原因がわかんないところがまた怖いですな。
きいいいいいいっ!…といってもねえ…。
黒板を引っかくような不快感がありますな。
これ,原文では,どんな綴りなんでしょうか。
