書籍購入に係る,ちょっとした行き違いが,とんでもない事態に至る様を描いたユーモア作品ですが,このブラックさは,結構こわいところもあります。
主人公の抗弁も聞かずに,事務的に,書籍の購入代金の催告を連ねるブック・クラブ。
主人公が催促に応じないとなれば,集金代理機関に所管替えとなり,一層,事務的・強権的対応に拍車がかかります。
次には,法律事務所から,訴訟手続きに移行するとの通知がやって来ます。
些末な民事事件のはずなのに,偶然の間違いが積み重なって,主人公は,なんと誘拐殺人事件の犯人と混同されてしまうのです。
一連の融通の利かない事柄が,コンピューターによる記録処理の負の部分が重なって発生してしまったことによるものというストーリーは,にわかには納得しがたいものの,データ入力等,人の手による処理の部分のミスがあっても,それを絶対のものとして,正確無比に,決められた手続きに従って,確実に行うという,コンピューターの恐さをうまく押さえた作品であると思います。
まあ,通常ありえないような処理については,再確認を含め,安全弁的な何らかの対策が重層的にとられているとは思うのですが,このあいだの,某証券会社の入力ミスのように,考えられないような状況がそのままいってしまうということもありえます。
この作品のようなえげつない事態にまで至るということはないでしょうが,この,どうしようもない結末はいいですね。
文書内容の重大さを理解せず,そこいらのつまらん文書と同じ取扱いをして,取り返しのつかない結果をもたらす非常識な石頭的処理。
でも,コンピューターには,罪の意識も何もありません。
むしろ,極めて公正な処理をおこなっているだけというのがつらいところです。
シンプルながら,キレのよい短編であると思います。
講談社文庫「世界ユーモアSF傑作選1」収録。
ディクスンは,なんといっても,ドルセイものなんだろうが,あまり食指が動きません。ホーカ・シリーズも,今一つ,性に合わないといいますか…。
