見よ,かの巨鳥を!~ネルスン・ボンド①

 冥王星の方角,地球から60億キロ離れた彼方から,太陽系を目指して,ひたと迫り来る途方もなく巨大な飛行物体。
 それは,一羽の鳥だった!

 バカSFの伝説的作品ともされていたこの作品。
 地殻の厚さが,卵の殻の厚さと,比率的に似ていることから,こんな思いつき話を進めることができたんでしょうか。

 発想のバカバカしさに,作者自身も多少の気恥ずかしさがあるのか,やや弁解がましい出だしが微笑ましく感じます。

 これから書くのがばかばかしいほどくだらない物語だということ。もうひとつ,それにもかかわらず,なぜかそれを書かなくてはならないということだ。

 木星よりもでっかい鳥が,近辺を通過しても,なぜ重力の影響を受けないのだろう?

 「きみはまだ古い観念にとらわれているんだよ,ファーティ。目の前にあるのは,奇怪で新しいなにものかだ。どんな法則が“時の鳥”を支配しているか,だれにわかる?」

 そないに逆ギレされてもねえ…。
 とっぴな発想でも,ベイリーさんやワトスンさんなら,なんやかやと理屈を捏ね回すところなんでしょうが,まあ,このように一刀両断に割り切ってしまうのもよろしいか。

 惑星誕生の諸説を語るくだりも,結末の無茶苦茶さとのズレ具合が目だって,浮いております。

 そういういい加減さもありますが,全般を通じては,基本的に意外に真面目なトーンだなと。

 もし,おちゃらけ調子でやられてたら,バカ+軽薄ということになったのでしょうが,不思議に真面目な雰囲気が,奇妙なギャップの効果を生み出しているように感じます。

 バカバカしいながらも,壮大なだけに,何といいますか,価値観を揺さぶる力もありますかな。

 一読の価値がある…のか,ないのか,微妙な作品であります。

 国書刊行会「グラックの卵」の巻頭ナンバー。