冥王星の方角,地球から60億キロ離れた彼方から,太陽系を目指して,ひたと迫り来る途方もなく巨大な飛行物体。
それは,一羽の鳥だった!
バカSFの伝説的作品ともされていたこの作品。
地殻の厚さが,卵の殻の厚さと,比率的に似ていることから,こんな思いつき話を進めることができたんでしょうか。
発想のバカバカしさに,作者自身も多少の気恥ずかしさがあるのか,やや弁解がましい出だしが微笑ましく感じます。
これから書くのがばかばかしいほどくだらない物語だということ。もうひとつ,それにもかかわらず,なぜかそれを書かなくてはならないということだ。
木星よりもでっかい鳥が,近辺を通過しても,なぜ重力の影響を受けないのだろう?
「きみはまだ古い観念にとらわれているんだよ,ファーティ。目の前にあるのは,奇怪で新しいなにものかだ。どんな法則が“時の鳥”を支配しているか,だれにわかる?」
そないに逆ギレされてもねえ…。
とっぴな発想でも,ベイリーさんやワトスンさんなら,なんやかやと理屈を捏ね回すところなんでしょうが,まあ,このように一刀両断に割り切ってしまうのもよろしいか。
惑星誕生の諸説を語るくだりも,結末の無茶苦茶さとのズレ具合が目だって,浮いております。
そういういい加減さもありますが,全般を通じては,基本的に意外に真面目なトーンだなと。
もし,おちゃらけ調子でやられてたら,バカ+軽薄ということになったのでしょうが,不思議に真面目な雰囲気が,奇妙なギャップの効果を生み出しているように感じます。
バカバカしいながらも,壮大なだけに,何といいますか,価値観を揺さぶる力もありますかな。
一読の価値がある…のか,ないのか,微妙な作品であります。
国書刊行会「グラックの卵」の巻頭ナンバー。
