勤務時間の少なくとも80%をクロスワード・パズルに費やすジョン・クレイマー少尉。
昇進や受賞とは無縁の軍歴を重ねるはずであった彼のもとに,突然,グロート中将なる高官から呼び出しがあります。
中将は,秘密裏の大掛かりな陽動作戦の責任者で,この大作戦の副官にクレイマーが抜擢されたというのです。
中将は言います。
「機械がきみのカードをはじきだしたんだよ。だから,きみはたいへんな権限をもつことになるし,みんなに嫌われることになる。副官というのは,そういうものなんだ。…」
クレイマーは副官として,中将の使いをやり,調査を行い,首切り役をつとめ,つまり,中将がやってもらいたいとおりのことをやるということです。
この“リプソー作戦"は,着々と進行されます。クレイマーも,憎み恐れられる存在として,忠実に職務をこなします。
いよいよ,作戦間近となったある日,おとり作戦部隊の役目を行うクロー将軍とグロート中将は,その全容をクレイマーに打ち明けます。
さて,新しい本部の下見に先発したクレイマーであったが,そこにもぐりこんでいたスパイに捕らえられてしまいます。
敵の拷問をうけ,“リプソー作戦"をぶちまけるようせめられるクレイマー。
彼は,ついに,「ブランク・タンク」に入れられてしまいます。「ブランク・タンク」とは,人を完全な無感覚状態に陥れる装置。クレイマーは,雄々しくも耐えようとするのですが…。
フレデリック・ポールとC.M.コーンブルースのコンビによる,シニカルなユーモアにあふれた作品であります。コーンブルースの死後,ポールが手を入れてできた作品らしい。
軍組織の官僚主義的な内実とともに,人を駒として使い切ることに,何の罪悪感も感じない非情さが,実に冷徹に描かれておりまして,やや,紋切り調の風刺といえなくもないけれども,シャープな作品に仕上がっております。
“Quaker Cannon”⇒“Quaker Gun”は,張子の大砲という意味で,米独立戦争や南北戦争でも実際に使われたらしい。
なんで,“Quaker”かというと,クウェーカー教徒は,戦争と暴力に反対という立場をとっていることに由来するものだそうだ。
それにしても,クレイマー少尉の受けた仕打ちのひどさは,まことに気の毒としかいいようがない。
これじゃあ,浮かぶ瀬がありませんね。
軍人としても,人間としても…。
