主人公の,ベネディクトは,生真面目で小心な青年。
生意気な,またいとこのランドルフへのお土産にと,ベネディクトが玩具店で買い求めたのは,「ベンガルの猛虎」という名の,虎のおもちゃでした。
おもちゃといっても,鋼鉄のスプリングを内蔵し,躍動感あふれる実物大の虎。 しかも,持ち主の指示に従うのです。
こんな素晴らしいものを,どうしてランドルフなどにやる必要がある?
「うちには,虎がいるんだ」
自信にあふれたベネディクトは,にわかに存在感を増し,ビジネスにも女性に対しても,優位に立つようになります。
そして、いつのまにか,虎は忘れられ,押入れの片隅で,ほこりを被るようになっていきます。
万事順調だったベネディクト。
たが,ある日を境に,歯車がずれはじめて…
人間関係というものは,基本的に,「呑む OR 呑まれる」であり,いわゆる「押し」の強い人(声の大きい人でもありますね→でも,それが正しいとは限らないですが。)結局は得をするというのは,世間日常にある真実であります(ひがみも込めて)。
ベネディクトの,これまでと打って変わってのしていく様は,まさに「虎の威をかる狐」であるとはいえ,痛快ですが,借り物の自信であるための危うさがつきまとっており,つまずくと,ぼろぼろになってしまうのです。
神通力を失った虎は,まさに「張子の虎」。
なんとも,さみしい話で,身につまされます。
作者のキット・リードは,相当に奇妙な作風です。
何篇か読んだ限りでは,寓話めいた,運命論的な雰囲気があります。
その中でも,「ぶどうの木」という短編が,なかなかに怖いお話です。
「オートマチックの虎」は,ジュディス・メリル編「年刊SF傑作選5」(創元推理文庫)に収録。
