人類は,地球から銀河系に乗り出し,無数の惑星を植民地化し,その帝国を支配したが,その1万7千年後に絶滅していました。
それから48世紀が過ぎた今でも,その成功と破滅の物語は,想像力を刺激するものです。
異星人からなる調査隊は,地球上にある、人類の真の発祥地といわれる峡谷での遺跡調査を行っていました。
その一員である「わたし」は,「同化」という特殊機能を有します。
体細胞を変化させ,発掘物におおいかぶさり,それと同化し,その歴史をわがものとすることができるのです。
「わたし」は,356万年前の石器,2万3千年前の槍の穂,ナイフの柄,金属製のスタイラス,三つの小さな骨のかけらの宝飾品,銃弾と,それぞれ時代を異にする発掘品から,人類の歴史を解き明かしていきます。
最初の石器を握っていたのは,黎明期の猿人たち。当時,探査に訪れていた異星人を獲物として,この石器で集団で遅いかかったのです。
奴隷制度,植民地,環境破壊…,アフリカを舞台とした,強烈なエゴと闘争の歴史。
このような人類の種族的特徴が,瞬く間に銀河系に覇権を築き,また滅び去った所以なのでしょうか。
調査も終了間近のとき,一人の調査員が行方不明となり,血まみれの通信機,破れた衣服と,白く輝く骨が発見されます。
「わたし」は,その骨に同化し,その調査員が,調査地のまわりをうろつく不気味な生き物たちに殺されたことと,その骨についての驚くべき真実を知るのです。
人類の愚かさ,醜さとたくましさを,巧みなエピソードに乗せて描きますが,ペシミスティックに傾くばかりではありません。私には,作者は,善悪を超えた,これが人間の性なのだということを書いたのではないかと感じます。
第一景の石器から始まり,第七景の白骨で再び元へ帰る,そんな輪廻のような構成も見事な作品だと思います。
1995年度ヒューゴー賞,ネビュラ賞ノヴェラ部門受賞作。
ハヤカワ文庫SF「90年代SF傑作選 上巻」収録。
