大御所ポール・アンダースンさんなんですが,不思議なことに,あまり作品との相性がよくないなあと感じる作家なんですね。
ハード系だけでなく,ファンタジーまで幅広い作風で,懐の深い作家のはずなんで,私の好みに合致する作品も結構見つかるはずなんですが…。
そんな中でも,「わが名はジョー」は,なかなか,乗りよく読みきれた作品であります。
木星開発計画のために,人工的に造られた擬似木星人。
思念により遠隔操作される擬人は,苛酷な木星の環境に適応するように頑健な肉体と人間並みの高度な脳を備えていた。
事故により半身不随となった生物物理学者のアンダルシーは,擬人のジョーを思念操作し,成功をおさめつつあったのだが,最近,思念投射装置の心臓部にあたる“K電子管”が過負荷のため焼け切れるという現象が頻発していた。
当該計画に莫大な資金を投じている関係上,精神工学の権威であるコーネリアス博士がその究明のために派遣されたのである。
擬人ジョーは,投射された思念から,思考パターンを解析し,まさに,アンダルシーの人格というものを有しつつあり,制御が困難になってきている…というよりも,逆にジョーがアンダルシーを制御するという状況になってきていたのであります。
まさに「人形つかい」ものの有名な作品で,理論的裏づけをできるだけつけていこうという姿勢が顕著に見られる実直な作品といえましょう。そういう記述が嬉々として描かれているという印象があります。
木星の強烈かつ異質な環境に適応するジョーは,粗暴ながらも,たくましい生命力とエネルギーに満ち溢れています。
アンダルシーは,ジョーとして活動するときこそ喜びを感じ,むしろ,我が身に戻るときの方が苦痛を感じるほどになります。
一般的には,分裂した自我の合間で葛藤する,陰気な物語を想像してしまうものですが,ポール・アンダースン先生は,楽天的前進主義で,こんな後ろ向きのいじいじした発想など蹴散らかしておしまいとなります。
ジョーのような擬人たちを操作する人間がほかにもいるのでしょうか。
地球で体の不自由をかこっている人間は,アンダルシーだけとはかぎらないだろう?…それに,老人もいる。
うーん,この割り切りがねえ…。
そういえば,シマックの“都市”でも,犬も人間も,木星の世界に魅せられ,再び,不自由なこちらの世界におさらばするという話がありましたね。
