物言わず,静かに歴史の舞台から永遠に去ってしまった動物たち。
絶滅動物の物語は,私たちを引き付けてやみません。
地球のかけがえのない仲間を失ってしまった喪失感,無思慮にも彼らを絶滅へと追いやったことへの悔恨の思い。
ドードー鳥も,まさにそんな代表的存在の一つです。
人を恐れず,かくこくなくて,肉もまずいときている,不恰好な飛べない鳥。
ポール・リンドバールは,テキサス大学鳥類学部の院生で助手をしています。
ひょんなことから,ミシシッピー州南部の辺地で,大恐慌前まで,「みっともないニワトリ」が飼われていたとの驚愕すべき情報をつかみ,その数奇な運命(ちょっと大げさかな)をたどっての探索が始まります。
ポールは,まず南部奥地の道なき道に車を進め,一体どうやって生計を立てているのか不思議なくらいの一軒家の農家にたどり着き,ドードーが飼われていたかもしれないという廃屋の場所を尋ねます。
一時代前にスリップしたかのような農家一家の何ともいえないおかしさ。
南部のディープな歴史や,ドードーに関するトリビア的知識がストーリーにうまく組み込まれており,なかなかにボリュームも豊かです。
全体を通じる茶目っ気の有るトーンもいい味を出しています。私はすっかり物語のとりことなってしまいました。
それにしても、「みっともないニワトリ」の飼い主たちが,このニワトリがあのドードーであることにさっぱり気づかなかったとは,全くトホホの世界です。挙句の果てには…
結末は,力の抜けてしまうようなものですが,奇妙な話には,かえってふさわしいかもしれませんね。
1980年ネビュラ賞ノヴェレット部門,1981年世界幻想文学大賞短編部門受賞作。
ハヤカワ文庫SF「80年代SF傑作選 上巻」収録。
