変わったタイトルですね。
原題は,“Grandma's Lie Soap"で,まさに直訳です。
農場のおばあちゃんの家の洗面台の高い棚の上にある大きく頑丈な茶色の石鹸
…それは,おばあちゃんの頭の中だけにしか書かれていない処方箋で,壺に貯えられている薬草から作られたものでした。
おばあちゃんの“嘘つき石鹸"で口を洗われたら最後,どんなに嘘をつきたいと思っても,再び偽りを言うことはできなくなるのです。
さて,主人公は,成長して,化学薬品会社の研究員の暮らしをしていました。
彼は,世の仕組みなるものをわかってくるにつれ,“真実"の表の下に,スキャンダルと中傷とぺてんがうずまき,そういう人たちが勢いよくはびっこているという事実に,げんなりしてしまいます。
愛する彼女にふられてしまった主人公は,久々に農場に帰って,おばあちゃんに,石鹸の調合の仕方を教えて欲しいとお願いするのですが…。
ほっこりした雰囲気に,捨てがたい味のあるクラシックであります。
それなりにシニカルな視点を持つ作品なんだけれど,全体に毒気があまりないため,タイトルと雰囲気がよく合っているんですよね。
主人公は,おばあちゃんの許しを得て,歯磨き粉に秘伝の成分を含有させることで,世界中の人々を嘘から解放?してしまう。
政治,宗教,芸術…真実を看板にしていたものが,虚飾をはぎとられ,大きな変動が起こります。
また、精神病が著しく減少する…何となくわかりますよね,自分を抑圧しなくてすむようになったのだから。
嘘のない世界は「ユートピア」?
でも,主人公は,迷っています。
疑うことをしらない,だまされやすい人々だらけにしてしまって本当によいのだろうか?
「SFマガジン」1969年11月号掲載。
ロバート・アバーナシイは,かなりマイナーな作家であるが,創元の「SFベスト・オブ・ザ・ベスト」下巻に「ジュニア」という奇妙な作品が掲載されています。
