巨大な核融合反応炉によるイオン推進式の巨艦ミダス号で,宇宙航路において大活躍してきたジーク船長とその妻メアリー。
いつしか年月が過ぎ,宇宙航路の花形だった巨艦は,より経済性を重視した直接推進式の小型船に取って代わられており,ジーク船長も運航契約を打ち切られてしまいます。
小惑星セレスへ到着したミダス号。
かつては,ゲルマニウム大鉱山で栄えたこの惑星も,資源が枯渇し,往年の活気を失っていました。
ジークの昔なじみの市長アーロンによれば,低品位となった鉱石を精錬するだけでも,多大の動力を要するが,動力源たるウランを確保できる資金ですら見通しが立たず,他の惑星への集団移住もやむなしとの状況らしい。
ジーク船長も,ミダス号も,そして,惑星セレスも,その役割をすでに終え,黄昏のときを迎えようとしていました。
ジーク船長は思います。
ミダス号とともに,宇宙の彼方へと,永遠の旅に出航しようか。
そこには,「いこいのみぎわ」はない。
だが,ジーク船長は決心します。
セレスにとどまろう。ミダス号の巨大な核融合エンジンを惑星セレスに必要な動力源として活用しようと。
「結局,ここがいこいのみぎわだったのか―やっと腰を落ちつけられる場所,年とって,その荒々しさを失った静かな小世界。
しかし,すべての水たまりがよどんで腐っているとは限らない。
たとえ,流れにとり残されていようとも。」
レスター・デル・リイといえば,あの,おセンチな女性ロボットへの恋物語の「愛しのヘレン」で有名ですが、個人的には、もうひとつ好きになれず、正直いって,この作品も特段期待していたわけではなかったのだが,意外にいいじゃないですか。
古き良き時代への郷愁と感傷にあふれた哀感漂ういいお話です。
まあ,時代に取り残された職人気質の男が,地味で目立たないけれど,存在価値を認められる居場所を見つけるといったストーリーなんですが,私が年とったせいか,流れがわかっちゃいても,じーんときてしまいますね。
たまに,ふと読みたくなる作品なのかもしれません。
「いこいのみぎわ」とは,詩篇からとられているようだが,たいへんに美しい言葉ですね。
新潮文庫「スペースマン」収録。
